日本衛生学会 68巻1号(2013年1月号)
編集後記
日本衛生学会 会員の皆様
新年あけましておめでとうございます。2012 年の今年の漢字は「金」と決まりました。『金環日食のほか,ロンドン五輪での日本人選手の活躍や,東京スカイツリーの開業,山中伸弥教授のノーベル賞受賞などで,「多くの金字塔が打ち立てられた」ことが理由に挙げられた』ということだそうです。政治の変化など社会環境は刻々と変化しておりますが,2013年は「多くの金字塔」から継続して,よい方向への変化の芽が育っていくことが望まれます。
さて,日本衛生学雑誌は,2013 年から大きく変化を遂げました。すでに閲覧していただいていますように,オンライン化を敢行いたしました。オンライン化の目的としては,経費の削減ということもありますが,それと肩を並べる様に,著者サービスの向上と,科学研究成果を普遍的に広く公開するという意味合いこそ大きなものだと考えて,編集委員会ならびに理事会での検討をもとに,遂行させていただきました。
著者サービスの向上という意味で,一つにはカラー図譜の掲載が容易になること。オンラインでの閲覧では,デジタルファイルによって,カラーの図などの投稿と閲覧が容易に可能となり,それによって,著者の皆様が伝えたいメッセージが読者に対して,よりわかりやすく伝わるという利点があります。さらには,カラー図譜の料金も含めて,一大決心の下に,著者負担料金の大幅な削減を敢行しました。昨年
7 月までの和文誌編集委員会を務めていた立場で,申し上げにくいのですが,従来,著者負担金は非常に高額な設定をせざるを得ない状況が続いておりました。しかし,その状況の中で,一度,掲載論文の著者になってくださった方あるいはその方の教室の方たちが,再度,別の論文を日本衛生学雑誌に投稿しようかと考えていただいた時に,前の高額であった著者負担金の記憶は,その妨げにこそなれ,再度の投稿を促す要因にはなりえないこと,重々,承知はしていたのですが,いくら学会の経費が,機関誌刊行(日本衛生学会でいいますとEHPM
と本和文誌です)と学術大会の
実施がメインであるとは云え,ある程度,収支バランスが取れていないと,学会活動自体が破綻しかねない状況にありました。
よって,オンライン化のコンセンサスが醸成されるまで,忸怩たる想いの中で,著者の皆様に,心の中で,お詫びに近い気持ちを抱きながら,発刊を継続していた次第でした。
別途紹介いたしますが,2013年以降,著者負担金も相当の刷新を実施し,十分に,幾度でも会員の皆様の成果を,広く公表していただける舞台として日本衛生学雑誌をご利用いただける状況にも至ったと考えております。
こういった流れは,もちろん,科学研究に関連する一般的なコンセンサスの変化に応じるようにという措置でもあります。主に国税などを用いた科学研究の成果は,広く国民に対して,ひいては全世界の人々に対して,特に医科学領域であれば,それらの人々の健康に資するために,公表されていかなければなりません。以前の様に,学会の会費は,その学術刊行誌の論文が読めること,という概念からは,上記の様な科学研究成果の国民生活の向上への貢献の度合いが,非常に閉鎖されたものに留まり,閉塞した状況を突破できないことになります。これらのことを勘案した上でのオンライン化であり,さらに実はJ-STAGEを介して,2012
年まではオープンアクセスであった日本衛生学雑誌の刊行内容が,2013年は認証を必要とする刊行状況に,一旦,後戻りする状況になってしまっているのですが,これも,2014
年から再度,オープンアクセスになるように,情勢を整えていきたいと思っております。会員の皆様には,こういった科学の在り方ということの意義を十分にご理解の上,ご協力いただけましたら幸いです。
では,学会に対する会費とは何か?もちろん,学術総会への参加や演題発表は会員に限られる部分があります。さらに,その成果公表については,ある意味,上記の科学の国民への貢献ということを支持する者(いわゆるサポーターですね)としての支出であろうと考えております。こういった状況をご理解の上,機関誌発刊事業に対して,今後共,ご協力,ご鞭撻をお願いいたしたく存じます。
2012年7月から大槻はそれまで三年間務めさせていただきました和文誌編集委員長から全体の編集委員長を仰せつかっております。和文誌編集委員長をさせていただいおりました期間,編集後記には,もう勝手気儘に大槻のオリジナル楽曲の紹介などをさせていただいておりました。さて,今回は・・・オンライン化の説明という意味合いもあっての編集後記ですので,楽曲紹介は遠慮させていただきますが,実は,2012
年 3 月の京都での総会での懇親会で,皆様が少々ほろ酔いになられていた状況の中で,「学会主題歌担当理事」を仰せつかりました(ご記憶の方はいらっしゃらないとも存じますが・・・)。で,2013
年3 月の金沢での学会抄録集には,どこかにこっそり(?)その案を紹介させておりますので,ご期待(?)ください。
それでは,皆様と 3 月の金沢でお出会いすることを楽しみにしながら・・・
生まれ変わった日本衛生学雑誌を,末永く,よろしくお願いいたします。
(大槻剛巳)
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